あれは六月の梅雨の晴れ間のことで、洗濯物を干そうとベランダに出た私はエアコンの室外機のすぐ脇の壁に、見慣れないゴルフボールほどの大きさの灰色の塊がくっついているのを見つけ、その不気味な造形に一瞬で心臓が凍りつきました。よく見るとその表面には六角形の穴がいくつか開いており、一匹の長い足を持つ蜂が熱心に作業を続けていましたが、それがアシダカグモならぬアシナガバチの巣作りであると直感した私は、一目散に部屋の中に逃げ込み、窓越しにその光景を眺めながらどう対処すべきか必死にスマートフォンの画面を叩きました。業者を呼ぶことも考えましたが、まだ巣が小さい初期段階であれば自力での解決が可能であるという情報を信じ、私はすぐに近所のホームセンターへ走り、店員さんに「とにかく一番強力で遠くまで飛ぶ蜂の巣駆除スプレーをください」と頼み込み、おすすめされた大容量のジェット噴射タイプを二本買い込みました。決戦の時間は蜂の活動が鈍るという日没後二時間が経過した深夜に設定し、私は防護服代わりに厚手の白いスキーウェアを着用し、顔には目出し帽とゴーグル、首元にはタオルを巻き、長靴と厚手の軍手を二重にはめるという、真夏にもかかわらず汗だくの完全装備で挑みました。静まり返った深夜のベランダで、懐中電灯の光を直接巣に当てないよう慎重に距離を詰め、三メートルほど手前から一気にスプレーのトリガーを引き抜くと、暗闇の中でシュワーッという激しい噴射音とともに白い霧が巣を包み込みました。中から数匹の蜂が羽音を立てて飛び出してきましたが、スプレーの圧力が凄まじく蜂を押し戻すような形で薬剤を浴びせ続けることができ、わずか数十秒のうちに全ての動きが止まり、ポトポトと床に落ちる音が聞こえた瞬間に私はようやく大きな呼吸をすることができました。翌朝、明るい光の下で確認すると、そこにはもはや生気を失った灰色の殻と数匹の骸が転がっているだけで、私のベランダは再び平和なプライベート空間へと戻りましたが、この経験を通じて学んだのは、蜂の巣駆除スプレーの性能こそが生死を分ける盾になるということであり、あの日もし中途半端な霧吹きのスプレーを選んでいたら、今頃私は病院のベッドにいたかもしれません。自分の手で家を守り抜いたという達成感とともに、自然界の厳しさを肌で感じた忘れられない夜となりましたが、それ以来私は春先になると必ず忌避効果のあるスプレーをベランダの隅々に吹きかけるようになり、予防の大切さを身をもって実践しています。