今思い出しても背筋が凍るような経験ですが、私がかつて住んでいた古いアパートでは、夏が近づくとゴキブリが毎日出るという地獄のような日々が数ヶ月間続きました。最初はキッチンの隅を走り去る影を一匹見た程度でしたが、数日後にはリビング、さらに一週間後には寝室や浴室と、まるで家全体が彼らの領土に飲み込まれていくかのような恐怖に襲われました。仕事から帰って玄関のドアを開け、電気をパッとつけた瞬間に床の上を数匹がサササッと霧散する光景を見るのが日常となり、私は家を安らぎの場ではなく、いつ敵が現れるかわからない戦場のように感じるようになりました。どれだけ殺虫スプレーを撒き散らしても、翌日になればまた別の個体が平然と姿を現し、私は自分の掃除が足りないのか、あるいは建物全体の構造的な欠陥なのかと自問自答し、精神的に追い詰められていきました。夜中に寝ている時、ふと顔の近くでカサリと音がするのではないかという妄想に駆られ、不眠症に近い状態になったこともあります。そんな絶望的な状況を変えたのは、ある日決意して行った徹底的な要塞化作戦でした。私は全ての家具を動かし、何年も放置されていたホコリを一掃し、さらにキッチンのシンク下の配管周りにあった一センチメートルほどの隙間を粘土パテで完璧に埋めました。さらに、毎日出る原因は餌があるからだと思い至り、それまで出しっぱなしにしていた調味料やペットフードを全て密閉容器に入れ、毎晩寝る前に排水口の蓋をすることにしました。この地道な努力を開始してから二週間が経った頃、驚くべきことに毎日出ていたゴキブリの姿がパタリと止まったのです。あの時の静寂と安堵感は、何物にも代えがたい幸福でした。ゴキブリが毎日出るという現象は、私の生活習慣の緩みと住宅の物理的な隙間が重なり合って生まれた必然の結果だったのだと、平和を取り戻した後に痛感しました。今では新築のマンションに住んでいますが、あの時のトラウマがあるからこそ、一滴の水滴も残さない徹底した管理を自分に課しており、それが結果として本当の安心を守ることに繋がっています。毎日出るという異常な状況を打破するためには、パニックを知識と行動に変える勇気が必要であることを、私はあの日々の苦しみから学びました。
深夜の絶望と戦ったゴキブリとの日々