キッチンを飛び回るショウジョウバエは不快ですが、食品を扱う場所であるだけに、化学合成された殺虫剤をむやみに使うことには抵抗がある、という方も少なくないでしょう。また、小さなお子様やペットがいるご家庭では、その安全性はさらに気になるところです。幸いなことに、ショウジョウバエは、薬剤を使わずとも、彼らの生態的な弱点を利用した、安全で効果的な方法で対処することが可能です。ここでは、化学殺虫剤に頼らない、自然派の撃退法をいくつか紹介します。まず、成虫の駆除に即効性があるのが「アルコールスプレー」です。薬局などで手に入る消毒用エタノール(濃度七十パーセント以上が望ましい)をスプレーボトルに入れ、ショウジョウバエに直接噴射します。すると、彼らはアルコールによって羽が濡れて飛べなくなり、気門が塞がれて窒息死します。アルコールは揮発性が高く、後に残らない上、除菌効果もあるため、キッチン周りでも安心して使用できます。次に、発生源対策として絶大な効果を発揮するのが「熱湯」です。ショウジョウバエの幼虫や卵は、熱に非常に弱いという性質があります。キッチンのシンクや洗面所、浴室の排水口に、週に一度か二度、六十度以上のお湯をゆっくりと、コップ一杯程度流し込むだけで、内部に潜む幼虫や卵を死滅させ、産卵の温床となるヘドロの形成を抑制することができます。これは、最も手軽でコストのかからない、根本的な予防策と言えるでしょう。また、ショウジョウバエが嫌う「匂い」を利用した忌避策も有効です。「ハッカ油」や「ペパーミント」といった、スーッとする清涼感のある香りは、多くの昆虫にとって不快なものです。水百ミリリットルにハッカ油を数滴垂らしたものをスプレーボトルに入れ、ゴミ箱の周りや、窓際、網戸などに吹き付けておくと、彼らが寄り付きにくくなります。ただし、香りの効果は永続的ではないため、こまめにスプレーする必要があります。これらの自然派の撃退法は、市販の殺虫剤のような劇的な効果は一度では得られないかもしれません。しかし、めんつゆトラップによる捕獲と組み合わせ、何よりも発生源となる生ゴミや汚れをなくすという基本的な清掃を徹底することで、安全かつ持続的に、ショウジョウバエのいない快適な環境を作り上げることが可能です。