本を読むことが、子供の頃からの何よりの趣味だった私。壁一面を本棚で埋め尽くした書斎は、私にとって、世界で一番落ち着ける、聖域のような場所でした。その聖域が、静かなる侵略者によって脅かされていることに、私は長い間、気づくことができませんでした。異変に最初に気づいたのは、ある梅雨の時期のことです。本棚の隅の方に、黒くて小さな、ゴマのような虫が数匹、落ちているのを見つけました。その時は、どこかから紛れ込んできたのだろうと、特に気に留めませんでした。しかし、数日後、本を読んでいると、ページの上に、体長1ミリメートルほどの、白っぽい小さな虫が、ちょこちょこと歩いているのを発見しました。チャタテムシです。私は、慌ててインターネットで調べ、彼らが湿気とカビを好むことを知りました。私の書斎は、北側に位置し、窓も小さく、確かに一年を通じてジメジメとしていました。そして、本棚は壁にぴったりとくっつけられ、風通しは最悪。まさに、虫たちにとっての理想郷だったのです。私は、意を決して、本棚の本をすべて取り出すことにしました。その作業の途中で、私は言葉を失いました。本棚の裏側の壁には、薄黒いカビが広がり、そして、学生時代から大切にしてきた、革装の豪華な全集本の、背表紙の部分が、まるで誰かに削り取られたかのように、ボロボロになっていたのです。犯人は、シミ(シルバーフィッシュ)でした。彼らは、カビの生えた壁と、本棚の裏の暗闇を拠点とし、私の大切な本を、餌としていたのです。私は、その日、半泣きになりながら、すべての本をベラン-ダに出して虫干しをし、壁のカビを落とし、部屋中を除湿機と扇風機で乾燥させました。そして、本棚を壁から10センチメートル離して設置し直し、大量の防虫剤と除湿剤を置きました。あの美しい装丁の本が、元に戻ることはありません。それは、私の無知と油断が招いた、あまりにも悲しい代償でした。
私の愛読書が虫の餌食になった日