家にいる蜘蛛を、ただの不快な侵入者だと決めつけてはいけません。彼らの多くは、あなたの家を、より厄介な害虫から守ってくれる、頼もしい「用心棒」なのです。その驚くべき益虫ぶりを、具体的に見ていきましょう。家の生態系の頂点に君臨するハンター、それは「アシダカグモ」です。脚を広げるとCD盤ほどの大きさにもなるその威容と、壁を高速で走り回る俊敏さで、私たちの最大の敵である「ゴキブリ」を、容赦なく捕食します。一匹のアシダカグモは、一晩で数匹、多い時には十数匹ものゴキブリを捕らえると言われています。彼らが家にいる限り、ゴキブリが繁殖することは、ほぼ不可能とさえ言われています。アシダカグモは、家のゴキブリを食べ尽くすと、餌を求めて、次の家へと静かに去っていきます。まさに、流浪の凄腕スナイパーです。一方、天井の隅で、か弱そうに揺れている「イエユウレイグモ」も、見かけによらず、有能なハンターです。彼らが張る、一見頼りない網は、ユスリカやチョウバエといった、照明に集まる「コバエ類」を捕らえるのに、非常に効果的です。また、湿気を好む「チャタテムシ」や、本を食べる「シミ」なども、彼らの餌食となります。そして、私たちの身近で、最も働き者なのが「ハエトリグモ」です。ピョンピョンと跳ね回る、この小さなハンターは、その名の通り、ハエや蚊といった、飛翔性の害虫を、驚異的なジャンプ力で捕らえます。また、布団やカーペットに潜む「ダニ」や、衣類を食べる「蛾の幼虫」までも、その捕食対象としています。これらの蜘蛛たちは、それぞれが得意な場所で、得意な獲物を狩ることで、家の中の害虫の数を、自然の力でコントロールしてくれているのです。もちろん、蜘蛛そのものや、その巣が不快であることは事実です。しかし、彼らを駆除するということは、同時に、これらの害虫たちを、野放しにしてしまうことにも繋がる、という側面を、私たちは知っておくべきなのかもしれません。