ワラジムシが、人間にとって直接的な害のない、むしろ庭の土壌を豊かにしてくれる益虫であると理解しても、やはりその見た目から、家の中で遭遇するのは避けたいと感じるのが正直なところでしょう。彼らをむやみに殺すことなく、しかし私たちの生活空間とは適切な距離を保つ。そんな「上手な付き合い方」は、可能なのでしょうか。その答えは、彼らの習性を尊重し、少しだけ環境に手を加えることで見えてきます。まず、最も重要なのは「棲み分け」という考え方です。ワラジムシが好むのは、暗く湿った、落ち葉や朽ち木が豊富な環境です。であるならば、庭の一角に、あえてそうした場所、いわば「ワラジムシのためのサンクチュアリ(聖域)」を作ってあげるという発想も一つです。例えば、庭の隅のあまり人が立ち入らない場所に、落ち葉や刈り草を集めて積んでおく「腐葉土コーナー」を設けます。すると、庭にいるワラジムシたちは、その快適な場所に自然と集まってきます。そこで彼らは分解者としての役割を存分に発揮し、私たちは良質な腐葉土を得ることができます。彼らに快適な住処を提供することで、わざわざ家の中のような、彼らにとっても危険な場所に侵入してくる動機を減らすことができるのです。一方で、家の中や、家の基礎周りに関しては、彼らが好まない環境、つまり「乾燥していて、清潔で、隠れ家がない」状態を徹底します。家の周りの落ち葉はこまめに掃除し、不用な植木鉢などを放置しない。そして、家の基礎にひび割れがあれば塞ぎ、床下の換気を良くして湿気を防ぐ。このように、庭には彼らが活躍できる場所を用意し、家周りは彼らが近づきにくいバリアを築くことで、お互いのテリトリーを尊重した、平和的な共存が可能になります。ワラジムシを一方的な「敵」と見なすのではなく、庭の生態系を構成する一員として認め、その習性をうまく利用し、誘導する。そんな視点を持つことが、農薬などに頼らない、より自然で持続可能な庭づくり、そして彼らとの上手な付き合い方の鍵となるのではないでしょうか。
益虫ワラジムシとの上手な付き合い方