この道三十年のベテラン駆除技術者として数え切れないほどの蜂の巣を相手にしてきましたがその中でも「赤い蜂」ことチャイロスズメバチの依頼が入ると現場には独特の緊張感が走りチーム全員が気を引き締め直すことになります。インタビューに答えてくれた佐藤氏はチャイロスズメバチを「蜂界の戦車」と形容しますがそれは他のスズメバチにはない圧倒的な外骨格の硬さと執念深さを持っているからです。通常の殺虫剤を噴霧してもチャイロスズメバチはその硬い鎧のような体で薬剤の浸透を跳ね返すことがあり倒したと思っても数分後に再び動き出すほどの生命力を見せるためプロの現場では薬剤の濃度や成分を通常よりも強力なものに切り替えるなどの特殊な対応が必要となります。「一番怖いのは彼らの追跡能力ですよ」と佐藤氏は語りますがキイロスズメバチなどが巣から数十メートルで追跡を諦めるのに対し赤いスズメバチは一度敵と見なした相手を数百メートル先まで執拗に追い詰め隙あらば刺そうとするため防護服を脱ぐタイミングさえ慎重にならざるを得ません。また彼らの巣は他の蜂の巣を乗っ取ったものであるため壁の中や屋根裏といった非常に作業しにくい閉鎖空間に作られていることが多く住宅構造に精通していなければ巣の全貌を把握することすら困難です。佐藤氏が最近直面した困難な事例ではリフォーム中の古い民家でキイロスズメバチの駆除を行っていたところ途中から中から真っ赤な個体が次々と飛び出してきて現場が混乱に陥ったことがあったそうでこれはまさに乗っ取りが完了する直前の巣であったことが判明しました。「赤い蜂は一見すると数が少なく見えますが背後には乗っ取られた側の大量の働き蜂が控えているため二重の攻撃を受けるリスクがあるんです」というプロの警告は一般の方々がいかに安易に近づくべきではないかを如実に物語っています。佐藤氏のアドバイスは一貫しておりもし家の周りで赤っぽくて力強い飛び方をする蜂を一匹でも見かけたらそれは氷山の一角であり近くに深刻な脅威が潜んでいるサインだと捉えて即座にプロの診断を受けてほしいということです。彼らの放つ赤色は決して人間を歓迎する色ではなく冷徹な自然の掟を体現した警告の炎でありその火種が大きくなる前に対処することこそが住まいと家族の平和を守るための唯一の道なのです。