頑丈な鉄筋コンクリートで造られ、気密性も高いはずのマンション。それなのに、なぜ家の中にゴキブリが現れるのか。その理不尽な侵入に、多くの住民が頭を悩ませています。マンションにゴキブリが出没する理由は、決して一つではありません。彼らは、私たちが想像する以上に巧妙なルートと、建物の構造的な特性を利用して、私たちの生活空間に忍び込んできます。まず理解すべきは、マンションという建物全体が、ゴキブリにとって巨大な集合住宅のようなものであるという事実です。一戸建てと違い、マンションは全ての住戸が壁や床、配管などで繋がっています。そのため、一つの部屋で発生したゴキブリが、共用部分や配管スペースを伝って、隣や上下階の部屋へと簡単に移動することができるのです。つまり、たとえ自分の部屋をどんなに清潔に保っていても、マンション内のどこか別の場所に発生源があれば、被害に遭うリスクから逃れることはできません。具体的な侵入経路として最も多いのが、玄関や窓、ベランダからの直接的な侵入です。ドアの開閉時や、宅配便の荷物と一緒に入り込んでくるケースは日常的に起こり得ます。また、網戸のわずかな破れや、サッシの隙間も、彼らにとっての格好の入り口となります。さらに、マンション特有の侵入経路として警戒すべきなのが、「配管周りの隙間」です。キッチンや洗面所、浴室の排水管や、エアコンの配管が壁を貫通している部分には、施工上どうしても隙間ができてしまいます。これらの隙間は、下の階や隣の部屋、あるいは共用廊下など、建物のあらゆる場所と繋がっており、ゴキブリにとっての秘密のハイウェイとなっているのです。排水口そのものからも、排水トラップの水が切れていると侵入してくる可能性があります。このように、マンションは一見すると密閉された空間に見えますが、ゴキブリのような小さな侵入者にとっては、無数の通り道が存在する、攻略しやすい要塞なのかもしれません。
ゴキブリがマンションに出る理由