同じマンションに住んでいても、その部屋が低層階にあるか、高層階にあるかで、遭遇するゴキブリの種類や侵入経路、そして対策のポイントには、実は大きな違いが存在します。それぞれの階層が持つ特性を理解することは、より効果的で無駄のないゴキブリ対策を立てる上で非常に役立ちます。まず、「低層階(主に一階から三階程度)」のゴキブリ事情です。低層階の最大の敵は、大型で黒光りする「クロゴキブリ」です。彼らは主に屋外の植え込みや排水溝、ゴミ置き場などに生息しており、地面を歩いて移動する能力に長けています。そのため、一階のベランダの窓や、エントランスに近い部屋の玄関ドアなど、地面に近い開口部から直接侵入してくるケースが非常に多くなります。また、建物の周りの植栽が豊富なマンションでは、そのリスクはさらに高まります。低層階の対策は、屋外からの侵入をいかに防ぐかが鍵となります。ベランダにハーブなどの虫が嫌う植物を置いたり、家の周りに残効性のある殺虫剤を撒いたりといった、外からのアプローチが有効です。次に、「高層階(一般的に十階以上)」のゴキブリ事情です。高層階では、クロゴキブリが自力で飛んで到達することは稀なため、屋外からの直接侵入のリスクは大幅に減少します。しかし、それで安心できるわけではありません。高層階で問題となるのは、小型で茶褐色の「チャバネゴキブリ」です。彼らは寒さに弱く、屋外では生きられないため、暖房が完備されたマンションなどの建物内部にのみ生息します。そして、彼らは垂直方向の移動を得意とし、配管スペースやエレベーターシャフトなどを利用して、下の階から上の階へと生息範囲を拡大していきます。つまり、高層階での遭遇は、建物内部のどこかで繁殖が定着していることを意味し、より深刻な事態である可能性が高いのです。高層階の対策は、外部からの侵入防止よりも、配管周りの隙間を徹底的に塞ぐといった、内部での拡散を防ぐアプローチが最重要となります。あなたの部屋が何階にあるかによって、主たる敵と戦うべき場所は変わってくるのです。